不動産管理業界において、パート・アルバイト従業員は欠かせない存在です。物件の巡回点検、共用部の清掃、退去立会い、オーナー報告書の作成など、日常の管理業務の多くを支えているのがパートスタッフという会社も少なくありません。
しかし2026年10月、この「パート依存型」の現場運営に大きな転機が訪れます。社会保険の適用拡大によって、従来は社会保険に加入していなかったパート従業員の多くが、新たに加入対象となるのです。
この変化により「手取りが減るなら働く時間を減らしたい」「扶養内に収めたいから辞める」といった反応が予想され、人手不足がさらに深刻化する可能性があります。本記事では、この「2026年問題」の内容を整理した上で、不動産管理会社が今から取り組むべき省人化DX戦略について解説します。
社会保険の適用範囲が拡大される2026年問題とは
2025年6月に成立した年金制度改正法により、2026年10月をめどにパート・アルバイトの社会保険加入における「106万円の壁」が撤廃される見込みです。
現行制度では、従業員51人以上の企業で働くパート従業員が社会保険に加入するには、週20時間以上の勤務、月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)などの要件を満たす必要がありました。改正後は賃金要件が撤廃され、週20時間以上働けば原則として社会保険の加入対象となります。
さらに、企業規模要件も段階的に撤廃される方針が示されており、将来的には従業員10人以下の小規模事業者も適用対象に含まれることになります。
厚生労働省は、今回の改正で新たに約200万人が社会保険の加入対象になると試算しています。不動産管理業界、特に清掃や巡回点検を担うビルメンテナンス分野への影響は大きいと予想されます。
ビルメンテナンス業界の実態を見ると、清掃業務の従事者はパート・アルバイトが全体の約4分の3を占め、60代以上の従事者が57.9%、70代以上も27.0%という高齢化が進んでいます。早朝の出勤が求められることが多く、限られた時間だけ働きたいという方が多いのが特徴です。
こうしたパート従業員が「社会保険料を負担するくらいなら働く時間を週20時間未満に減らしたい」と考えれば、現場の人手は一気に不足します。あるいは「扶養から外れるなら辞める」という選択をする方も出てくるでしょう。
社会保険の適用範囲が不動産管理会社にもたらす3つの課題
社会保険の適用範囲が拡大すると、不動産化管理会社に、次のような悪影響が及ぶ可能性があります。
- 採用難のさらなる深刻化
- 社会保険料の企業負担増
- 業務品質の維持難易度増
それぞれ詳しく見ていきましょう。
課題1:採用難のさらなる深刻化
不動産業界はすでに慢性的な人手不足に直面しています。厚生労働省の調査によると、2023年の不動産業・物品賃貸業では入職者83,100人に対し離職者が91,000人と、離職超過の状態が続いています。
2026年問題によって既存のパート従業員が離職や労働時間短縮に動けば、その穴を埋めるための新規採用はさらに困難になります。
課題2:社会保険料の企業負担増
社会保険料は企業と従業員で折半して負担します。東京都の協会けんぽ(40歳未満)の場合、保険料率は合計で約28%。仮に月収10万円のパート従業員が5人新たに社会保険に加入すれば、企業の年間負担は約84万円増加する計算になります。
中小の不動産管理会社にとって、この負担増は決して小さくありません。
課題3:業務品質の維持難易度増
人手が減っても、管理物件数や巡回頻度、オーナーへの報告義務は変わりません。限られた人員で従来と同じ業務品質を維持するには、業務プロセスそのものを見直す必要があります。
社会保険適用拡大への解決策は省人化DX
人手不足を補うために「もっと人を採用する」という発想だけでは限界があります。むしろ「少ない人数でも回せる仕組みを作る」という省人化の視点が重要です。
つまり社会保険適用拡大への解決策として、不動産管理会社におすすめなのは、「省人化DX」に取り組むことだといえます。
そして不動産管理会社の省人化DXで柱となるのが、次の3つのポイントです。
- 報告書作成業務のデジタル化
- 業務の標準化と属人化の解消
- 情報の一元管理とオーナー報告の効率化
それぞれどのように実現するのか、詳しく見ていきましょう。
報告書作成業務のデジタル化
不動産管理会社の現場業務で最も時間を消費しているのが「報告書作成」です。物件を巡回して写真を撮影し、事務所に戻ってからパソコンでExcelに写真を貼り付け、コメントを入力し、印刷してFAXやメールで送信する。この一連の作業に1物件あたり30分〜1時間かかっているケースは珍しくありません。
クラウド型の写真付き報告書作成ツールを導入すれば、現場でスマートフォンから写真を撮影するだけで報告書が完成します。事務所に戻る必要がなくなり、1日あたり数時間の作業時間を削減できます。
写真付き報告書作成アプリ「Raccoon(ラクーン)」は、こうした現場のニーズに応えるために開発されたクラウドサービスです。スマートフォンで写真を撮るだけで報告書が作成でき、オーナーや関係者への共有もワンタップで完了します。
関連記事:不動産管理業務は写真報告アプリで改善できる!DX推進方法を解説!
業務の標準化と属人化の解消
ベテランのパート従業員が退職すると「あの人しか知らないやり方」が失われ、業務が回らなくなることがあります。こうした属人化を解消するには、業務プロセスを標準化し、誰でも同じ手順で作業できる仕組みが必要です。
報告書作成ツールの中には「撮影パターン」機能を持つものがあります。あらかじめ「共用部入口→ゴミ置き場→駐輪場→掲示板」といった撮影ポイントをテンプレートとして登録しておけば、新人スタッフでも撮り忘れなく巡回できます。
関連記事:不動産巡回報告を効率化する方法とは?デジタル化に役立つツールを解説!
情報の一元管理とオーナー報告の効率化
複数の物件を管理していると、報告書や写真データがパソコンやファイルサーバーの中で散在しがちです。過去の報告書を探すだけで時間がかかる、という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
クラウド型の報告書管理システムであれば、すべての報告書がオンライン上に保存され、物件名や日付で瞬時に検索できます。オーナーから「半年前の巡回時の写真を見せてほしい」と言われても、すぐに対応できます。
業務に合わせたカスタマイズが必要な場合は、「Raccoon Pro」のようなオーダーメイド型のシステム構築も選択肢になります。点検チェック項目や報告書フォーマットを自社の業務フローに合わせて設計することで、より効率的な運用が可能になります。
関連記事:アパート清掃会社がフルカスタムの統合管理アプリを構築した事例を紹介!
不動産管理会社がDXで報告書作成時間をほぼゼロにした事例
ある中堅ビル清掃会社では、オーナーへの写真付き報告書作成に大きな負担を感じていました。清掃前・清掃中・清掃後の写真を撮影し、デジカメからパソコンにデータを移し、サイズを調整してExcelに貼り付け、コメントを記入し、印刷してFAXで送付する。この一連の作業だけで、1日5時間近くを費やしていました。
同社が写真付き報告書作成アプリを導入したところ、状況は一変しました。現場スタッフがスマートフォンで写真を撮影するだけで報告書が完成し、メールやLINEでオーナーに共有できるようになったのです。
導入後、報告書作成にかかる時間はほぼゼロになりました。さらに、事務所に戻らず直行直帰が可能になったことで、スタッフの働きやすさも向上。高齢のパートスタッフからも「操作が簡単で助かる」と好評だといいます。
このように、写真報告アプリで業務を効率化すれば、「社会保険料で手取りが減るなら働く時間を減らしたい」「扶養内に収めたいから辞める」といった理由からパートスタッフが少なくなっても、業務をこれまで通り回すことも可能です。
2026年問題には写真報告アプリによる業務効率化で備える!
社会保険の適用範囲が拡大される2026年10月まで、まだ時間があるように見えるかもしれません。しかし、業務プロセスの見直しやシステムの導入・定着には半年から1年はかかります。今から準備を始めることが重要です。
まず、現状の業務フローを棚卸しし、どこに時間がかかっているかを可視化しましょう。報告書作成、データ入力、過去資料の検索など、デジタル化できる業務は意外と多いはずです。
次に、パート従業員へのヒアリングを行い、2026年10月以降の働き方について意向を確認します。社会保険加入を機にもっと働きたいという方もいれば、労働時間を減らしたいという方もいるでしょう。早めに把握しておくことで、採用計画や業務分担の見直しに役立ちます。
そして、省人化に役立つツールの情報収集と試用を始めましょう。無料トライアルを提供しているサービスも多いため、実際に使ってみて自社に合うかどうかを確認することをお勧めします。
写真報告アプリ「Raccoon」は、無料トライアルも可能なので、ぜひ一度お試しください。




