不動産管理業界では、人手不足や点検品質にバラつきなどの課題に悩む企業が多いですが、昨今はデジタル化によってこれら課題を解決する企業も増えています。また、AIを活用すれば、さらなる業務効率化も実現できます。
今回は管理会社向けに、建物管理のデジタル化にAIは活用できるのかなど、業務効率化の最新情報を紹介します。
建物の老朽化と向き合う不動産管理会社が抱える課題
日本国内には築30年を超えるマンションが約250万戸、築40年超は約115万戸存在すると言われています。これらの建物は今後、急速に老朽化が進んでいきます。不動産管理会社や建物管理会社にとって、定期的な点検と適切なメンテナンスは資産価値を守るための生命線です。
外壁のひび割れ、防水層の劣化、水漏れ、壁紙の剥離、扉の破損、受水槽や排水槽の腐食、エレベーターなどの共用設備の不具合などなど、、、
建物を維持管理する上で確認すべき項目は多岐にわたります。これまで、こうした点検業務は熟練の技術者が現場を回り、目視で確認し、デジカメで撮影して、事務所に戻ってからPCで報告書を作成するという流れが一般的でした。しかし、この従来型の業務フローには大きな課題があります。
人手不足
まず、人手不足の問題です。建設業界全体で高齢化が進み、若手の技術者確保が難しくなっています。設備の点検や修繕対応が増加する一方で、対応できる人材が不足し、結果として一人あたりの業務負担が年々増大していることは大きな問題といえるでしょう。
報告書作成業務の非効率性
加えて、報告書作成に膨大な時間がかかることも深刻です。ある調査では、巡回点検後の報告書作成に1件あたり30分以上かかっているケースも珍しくありません。月間100件の点検を行う企業では、事務作業だけで月50時間以上が消費されている計算になります。
点検品質のバラつき
さらに、担当者の経験値によって点検品質にバラつきが出やすいという問題もあります。ベテランと新人では劣化の見極め精度に差が生じ、重要な兆候を見逃すリスクも否定できません。このような状況下で、建物管理業務のデジタル化とAI活用が注目を集めています。
建物維持管理をデジタル化する方法
建物維持管理のデジタル化は、大きく分けて2つのアプローチで進んでいます。1つは「業務プロセスのデジタル化」、もう1つは「AIによる診断の自動化・高度化」です。
業務プロセスのデジタル化
従来、現場で撮影した写真をデジカメからPCに取り込み、エクセルで報告書を作成し、印刷してFAXで送信していた業務は、スマートフォンアプリとクラウドサービスの組み合わせで劇的に効率化できます。現場でスマホのカメラで撮影した写真は、そのまま報告書として整形され、メールやLINEで即座に共有可能になります。Raccoon Proのようなカスタマイズ可能な報告書作成システムを導入することで、企業ごとの独自の報告書フォーマットや業務フローに合わせたシステムが構築できます。
写真にコメントを付加したり、作業前後の比較写真を自動で整理したり、物件情報と紐づけて一括管理することも可能です。複数の協力会社が同時に利用する場合でも、クラウド上で情報を一元管理することで、進捗状況の把握や品質管理が容易になります。
AIによる劣化診断の自動化
さらに進んだ取り組みとして、AIによる画像認識技術を活用した劣化診断の自動化があります。横浜に本社を置くジャスト社は、年間3000棟以上の調査実績を持つ建物診断の専門企業ですが、ディープラーニングを活用した外壁の仕上げ材判定AI、コンクリート壁のコア抜き可否診断AI、屋根のさび自動検出AIなどを開発しています。
外壁の写真をスマートフォンでアップロードするだけで、AIが仕上げ材の種類を判定できるシステム(参考: Nikkei)は、経験の浅い担当者でも正確な診断をサポートします。また、ミサワホームでは、屋根・外壁・シーリングの劣化状況をAIが画像から即座に解析・数値化し、診断結果を自動でレポート作成システムに組み込む仕組みを導入しています。(参考: PR TIMES)
NTTグループも社会インフラの点検技術として、画像認識AIによって道路附属物や柱上設備の腐食を高精度に検出する技術を開発しており、実証実験では97.5%の検出率を達成しています。(参考: NTT)
これらのAI技術により、従来は熟練技術者の目視に頼っていた診断業務が、客観的なデータに基づいて標準化され、見落としのリスクも大幅に低減できるようになりました。
建物維持管理をデジタル化するメリット
建物管理のデジタル化とAI導入によって、以下のような効果が期待できます。
- 業務効率の向上
- 報告品質の均一化と向上
- 顧客満足度の向上
- 予防保全型のメンテナンスへのデータ活用
それぞれ詳しく見ていきましょう。
業務効率の向上
スマートフォンで操作できる Raccoonのような写真報告システムを導入すれば、現場で報告書作成を完了できます。
ある不動産管理会社では、写真報告システムの導入によって報告業務をデジタル化した結果、1件あたりの報告書作成時間が25分から5分に短縮され、月間で約50時間の時間削減を実現しました。これは営業活動に充てられる時間が約6日分増えたことを意味します。空いた時間は顧客対応の質向上や新規案件の獲得に活用でき、企業の競争力強化につながります。
報告品質の均一化と向上
AIによる診断支援により、担当者の経験値に左右されない一定水準以上の点検品質を担保できます。新人でもベテランと同等レベルの診断が可能になり、人材育成のハードルも下がります。また、劣化の度合いを数値化することで、オーナーへの説明がより説得力を持つようになり、適切なタイミングでの修繕提案がしやすくなります。
顧客満足度の向上 ―
現場から即座に報告書を送信できることで、緊急時の初期対応時間が劇的に短縮されます。台風や大雨後の共用部損傷報告の遅れが問題だった企業では、写真報告アプリ Raccoonの導入により、初期対応時間が2時間から15分に短縮され、オーナー様からのクレームがほとんどなくなったという事例もあります。
予防保全型のメンテナンスへのデータ活用
点検データをクラウド上に蓄積することで、建物ごとの劣化傾向を長期的に分析できるようになります。これにより、より精度の高い修繕計画の立案が可能になり、予防保全型のメンテナンスへシフトできます。突発的な大規模修繕を避け、計画的な投資で建物の資産価値を維持することができるのです。
写真報告アプリ「Raccoon Pro」で建物管理をデジタル化した事例
横浜市内のE社は、「建物の健康診断」というユニークなサービスで注目を集めています。建物管理のプロフェッショナルが、マンションやビルを人間ドックのように総合的に診断し、詳細な報告書をオーナーに提出するというものです。
E社の診断は、外装では外壁のひび割れ、防水処理の劣化状態、タイルの浮き、内装では壁紙の剥離、建具の開閉状況、水廻りでは給排水設備の腐食や水漏れの兆候、そして受水槽、排水槽、エレベーターなどの共用設備まで、建物のあらゆる部位を網羅的にチェックします。
従来であれば、こうした総合診断は膨大な報告書作成の手間がかかっていましたが、E社ではカスタマイズ可能な報告書作成システムを導入することで、現場での作業効率を大幅に改善しました。現場担当者はスマートフォンで撮影した写真に簡単なコメントを追加するだけで、事務所に戻ることなく報告書の骨子が完成します。作業範囲図や過去の診断履歴も自動で添付されるため、オーナーにとっても理解しやすい報告書となっています。
さらにE社は、蓄積した診断データを基に、建物ごとの長期修繕計画を提案しています。5年後、10年後、15年後にどのような修繕が必要になるか、それにはどの程度の費用がかかるのかを具体的に示すことで、オーナーの信頼を獲得し、継続的な管理契約につなげています。「建物の健康状態を可視化し、将来を見通せるようにする」というコンセプトは、単なる点検業務を超えた付加価値として高く評価されています。
AIによる劣化診断機能の追加も検討中で、将来的には撮影した写真から自動的に劣化度を判定し、修繕の優先順位をAIがレコメンドする仕組みの導入を目指しています。
建物管理のデジタル化は報告書作成業務から開始するのがおすすめ!
中小の不動産管理会社、ビル管理会社、建物メンテナンス業者でも、手の届く価格帯のデジタルサービスが増えています。特に、写真報告業務のデジタル化は比較的導入のハードルが低く、短期間で効果を実感できる取り組みです。
AIによる劣化診断はまだ発展途上の技術ですが、画像認識の精度向上は著しく、実用レベルに達している分野も増えています。今後、より多くの診断項目がAIでカバーされるようになれば、建物管理の専門知識がなくても高品質な点検が可能になる時代が来るでしょう。
このような技術背景をふまえると、「管理業務をデジタル化したいものの、何から始めればいいかわからない」という方は、まず現在の報告書作成業務をデジタル化することから始めてみてはいかがでしょうか。写真の整理に何時間かかっているか、報告書の作成にどれくらいの人手が必要か、オーナーへの報告が遅れてクレームになったことはないか。こうした課題を洗い出すことで、デジタル化によって得られる効果が具体的に見えてきます。
写真報告アプリ「Raccoon」や、カスタマイズ版の「Raccoon Pro」は、すでに多くの管理会社に導入いただいております。デジタル化によって業務を効率化したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
建物管理業務のデジタル化をお考えですか?
カスタマイズ可能な報告書作成システム「Raccoon Pro」なら、貴社の業務フローに合わせた最適なシステムを構築できます。詳しくはこちらをご覧ください。

