2026年1月1日、「下請代金支払遅延等防止法」が大幅に改正され、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、通称「取適法(とりてきほう)」として新たに施行されます。この改正は、約22年ぶりとなる大規模な見直しであり、ビル管理会社や清掃業者、設備点検業者など、外注委託を行う多くの中小企業に影響を及ぼします。
そして取適法への改正において、注意しなければならないのが「下請け業者への委託記録」です。
本記事では、取適法の改正ポイントを整理するとともに、なぜ今「委託記録のデジタル管理」が求められているのか、その理由と具体的な対応策について解説します。
取適法とは
取適法とは、「中小受託取引適正化法」の略称で、従来の「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」が大幅に改正されたものです。
この取適法は、2026年1月1日から施行されます。
今回の改正で最も象徴的な変化は、法律の名称と用語の変更です。従来の「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」に改められました。これは単なる言葉の置き換えではありません。「下請」という言葉が持つ上下関係のイメージを払拭し、委託者と受託者が対等なパートナーとして取引を行うべきという考え方を法律に反映させたものです。
ビル管理業界においても、清掃業務や設備点検業務を外部の専門業者に委託するケースは珍しくありません。こうした取引においても、今後は「対等な立場での価格交渉」や「適切な記録管理」がより一層求められるようになります。
取適法の施行で変わること
下請法から取適法への改正により変わることはいくつかありますが、とくに把握しておくべきポイントは次の3点です。
- 適用対象の拡大(従業員100人超で規制対象)
- 価格協議ルールの新設(一方的な価格決定の禁止)
- 「書面交付義務」と「取引記録の保存義務」の強化
適用対象の拡大(従業員100人超で規制対象)
改正前の下請法では、適用対象は「資本金基準」のみで判断されていました。しかし、取適法では新たに「従業員数基準」が追加されます。具体的には、役務提供委託(清掃・点検・警備などのサービス委託)の場合、常時使用する従業員数が100人を超える事業者は「委託事業者」として規制対象になります。
これまで資本金が少額であることを理由に下請法の対象外とされていた企業も、従業員数が基準を超えていれば新たに規制対象となります。特に、事業拡大中の中小ビル管理会社やフランチャイズ展開している清掃業者は、自社が規制対象に該当するかどうか、早急に確認する必要があります。
価格協議ルールの新設(一方的な価格決定の禁止)
取適法では、「協議を適切に行わない代金額の決定の禁止」という新たな規定が設けられました。これは、中小受託事業者からコスト上昇などを理由に価格改定の協議を求められた場合、委託事業者がこれに応じず一方的に代金を決定することを禁止するものです。
近年、労務費・原材料費・エネルギーコストが急激に上昇する中、下請け業者が価格転嫁を求めても「今まで通りの金額で」と据え置かれるケースが問題視されてきました。取適法では、こうした商慣習を是正し、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を実現することを目指しています。
違反した場合、公正取引委員会から是正勧告が出され、事業者名と違反内容が公表されるリスクがあります。「知らなかった」では済まされない時代が到来しているのです。
「書面交付義務」と「取引記録の保存義務」の強化
取適法では、委託事業者に対して、中小受託事業者への「書面交付義務」と「取引経過の記録・保存義務」が課されています。具体的には、発注時に代金、支払期日、納期などの必要事項を記載した書面を交付するとともに、実際の取引経過を記載した書類を作成し、一定期間保存しなければなりません。
これらの義務に違反した場合、担当者個人と法人の両方に罰金が科される可能性があります。「口頭での発注」「電話での単価変更」といった曖昧な運用は、今後は通用しなくなります。
このように「書面交付義務」と「取引記録の保存義務」が強化されることが、多くの企業の課題となると考えられるのです。
取適法に則って委託記録を管理するときの課題
取適法に則って委託記録を管理するときの課題としては、紙・Excelでの情報管理に限界がある点が挙げられます。
多くの中小企業では、外注業者への発注や報告書の管理を紙やExcelで行っているのが実情です。しかし、こうしたアナログな管理方法には以下のような課題があります。
- 委託記録をすぐに見つけられない
- 記録した紙・Excelが消えてしまうかもしれない
- 業務が煩雑化する
まず、記録の検索性の問題です。過去の発注内容や価格交渉の履歴を確認したい場合、紙のファイルやExcelシートを一つひとつ探す必要があり、膨大な時間がかかります。公正取引委員会から調査が入った際に、必要な記録を迅速に提出できなければ、コンプライアンス上の問題として指摘される可能性があります。
次に、データの散逸リスクです。担当者の異動や退職により、「どこに何の記録があるかわからない」という状況に陥りやすくなります。また、紙の書類は紛失や劣化のリスクもあり、長期保存が求められる取引記録の管理方法としては不十分です。
さらに、業務効率の問題もあります。発注書の作成、報告書の受領、検収処理といった一連の業務を手作業で行っていると、本来注力すべき現場管理や顧客対応の時間が圧迫されます。人手不足が深刻化する中、限られた人員で法改正に対応するためには、業務そのものの効率化が不可欠です。
取適法への対応なら「委託記録のデジタル化」がおすすめ!
こうした課題を解決する手段として注目されているのが、クラウド型の業務管理システムです。外注業者への発注内容、作業完了報告、価格交渉の履歴などをすべてクラウド上で一元管理することで、「いつ」「誰が」「何を」「いくらで」発注したのかを即座に確認できるようになります。
クラウド型システムのメリットは、記録の検索性向上だけではありません。データが自動的にバックアップされるため、紛失リスクがなくなります。また、複数の担当者が同時にアクセスできるため、情報共有がスムーズになり、属人化の解消にもつながります。
ちなみに、ビル管理・清掃業界に特化したクラウド型ツールとしては、RaccoonProが挙げられます。RaccoonProは、本来は現場での作業内容を写真で報告するためのクラウドサービスです。
しかし、RaccoonProは柔軟なカスタマイズが可能なため、現場の点検報告書作成から外注委託管理まで、業務全体をデジタル化するためにフルカスタマイズすることもできます。
取適法対応に必要な記録管理機能を備えながら、現場作業員にとっても使いやすいインターフェースを実現していることは、RaccoonProならではのメリットといえるでしょう。
RaccoonProで委託記録をデジタル化するメリット
取適法へ対応するためにRaccoonProを導入するメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- 法令遵守(コンプライアンス)の強化
- 業務効率の向上
- 取引先との信頼性向上
これらにメリットを感じる方は、ぜひ当社へご相談ください。それぞれのメリットについて詳しく紹介します。
法令遵守(コンプライアンス)の強化
委託記録をRaccoonProでデジタル管理するようにすれば、取適法が求める書面交付義務・記録保存義務への対応が格段に容易になります。発注時の条件、価格交渉の経緯、作業完了報告などがシステム上に自動的に蓄積されるため、「記録が残っていない」という事態を防げるためです。。万が一、公正取引委員会から調査が入った場合でも、必要な情報を迅速に抽出・提出できる体制が整います。
業務効率の向上
デジタル化による業務効率向上の効果は絶大です。発注書の作成、報告書の受領確認、検収処理といった定型業務が自動化・省力化されることで、管理担当者の作業時間を大幅に削減できます。ある導入企業では、月末の報告書作成・集計作業にかかる時間が従来の3分の1以下になったという事例もあります。
また、現場作業員にとっても、スマートフォンから簡単に作業報告ができるようになるため、帰社後の事務作業が不要になります。「現場仕事が終わってから会社に戻って報告書を作成する」という非効率な働き方から脱却できます。
取引先との信頼性向上
外注先との取引記録を適切に管理し、価格交渉にも誠実に対応する姿勢は、取引先からの信頼獲得につながります。特に、大手デベロッパーや管理組合との取引では、コンプライアンス体制の整備が取引条件として求められるケースが増えています。「うちはきちんと記録管理しています」と胸を張って言える体制を構築することは、新規取引の獲得や既存取引の維持においても大きなアドバンテージとなります。
取適法の適用対象となるビル清掃会社がRaccoonProを導入した事例
神奈川県横浜市に本社を置くビル清掃会社G社は、約3,000棟のアパート・マンションの定期清掃を手がける中堅企業です。従業員数は約120名で、取適法の適用対象となることが見込まれていました。
導入前の課題
G社では、清掃業務の一部を協力会社(外注先)に委託していましたが、その管理は紙とExcelが中心でした。発注は電話やFAXで行い、作業完了報告は紙の報告書を郵送で受け取るという流れです。
この運用では、「どの物件を」「いつ」「いくらで」発注したのか、過去の履歴を確認するのに膨大な時間がかかっていました。また、協力会社との単価交渉の経緯も担当者の記憶頼みになっており、「言った・言わない」のトラブルが発生することもありました。
取適法の施行を控え、G社の経営陣は「このままでは法令違反のリスクがある」と危機感を募らせていました。
クラウドシステム導入による変化
G社は、取適法対応と業務効率化を同時に実現するため、クラウド型の外注委託管理システムとしてRaccoonProを導入しました。導入後は、発注から作業完了報告、検収処理までの一連の流れがすべてシステム上で完結するようになりました。
具体的には、管理画面から協力会社への発注を行うと、発注内容が自動的に記録されます。協力会社の作業員は、清掃完了後にスマートフォンで写真付きの報告を送信。G社の担当者は、報告内容を確認して検収ボタンを押すだけで処理が完了します。
過去の取引履歴は検索機能で瞬時に呼び出せるため、「この物件の前回の清掃単価はいくらだったか」「この協力会社との価格交渉はいつ行ったか」といった情報を即座に確認できるようになりました。
導入効果
導入から半年が経過した時点で、G社では以下のような効果が確認されています。
管理部門の月末作業時間は約60%削減されました。従来は報告書の集計や請求書との突き合わせに丸2日かかっていた作業が、半日程度で完了するようになったといいます。
また、協力会社との関係も改善しました。発注内容や単価が明確に記録されるため、「聞いていない」「そんな金額ではなかった」といったトラブルがなくなり、双方にとってストレスのない取引が実現しています。
G社の管理部長は、「取適法対応という観点だけでなく、業務効率化の面でも大きな効果がありました。今後の事業拡大においても、この仕組みがあれば管理体制を維持できるという安心感があります」と語っています。
委託記録のデジタル化には「RaccoonPro」がおすすめ!
2026年1月1日の取適法施行まで、残された準備期間は限られています。適用対象となる企業は、書面交付義務や記録保存義務への対応、価格協議ルールへの準備など、様々な対応が求められます。
特に、これまで紙やExcelで外注管理を行ってきた企業にとっては、業務フロー全体の見直しが必要になるかもしれません。しかし、これを「法改正への対応」という守りの視点だけで捉えるのはもったいないことです。
委託記録のデジタル管理は、法令遵守だけでなく、業務効率の向上、取引先との信頼関係強化、そして企業としての競争力向上にもつながります。法改正をきっかけに、業務全体のデジタル化を推進することで、持続的な成長基盤を築くチャンスと捉えることができるでしょう。
ビル管理・清掃・点検業界に特化した業務デジタル化ツールRaccoonProは、取適法対応に必要な記録管理機能を備えたフルクラウド型のサービスです。企業ごとの業務フローに合わせたフルカスタマイズが可能で、外注委託管理から現場の点検報告書作成まで、業務全体をデジタル化できます。業務のデジタル化を進めたい場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

